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分子研リポート1997 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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(1)

226 将来計画及び運営方針

流動部門

専任部門 流動元大学

研究室

人材の自由な交流

専門を生かした共同研究

5-3 流動部門の活性化を図る「流動部門開発プロジェクト研究」制度

分子科学研究所では我が国で最初に流動部門を設置し,研究面のみならず人事の流動性を高めることに大きな成果を挙げ てきた。平成9年度にこの流動制度の点検評価を行い,これまでの流動経験者を集めて長所短所を分析し,今後のこの制度の更 なる活性化を図るにはどのような改善をし,また,どのような新しい枠組みをとるべきかを議論した。

流動制度の最大の魅力は,大学での講義や雑務から解放され研究に専念できることにある。また,研究面においてもこの機会 に最先端の研究に参画し,新しい一歩を築きたいという気概を持って研究者が集っている。しかし,点検評価の結果明らかになっ た重大な問題点の一つに,流動元の大学を完全に離れた研究体制をとると流動終了後に研究室を再構築しなおさねばならない など,大学の研究者にとってマイナス面が多いという理由から,大学側の積極的な対応が阻害されているという現状がある。又, 流動元の大学の研究室に所属する学生が岡崎に移ることは,学生の転居に係わる膨大な経費,学生の流動元大学での単位取 得の問題などのために実質的には不可能に近い。分子科学の実験を中心とする研究は,教授や助教授のみで行うという体制で はなく,スタッフと学生のチームワーク体制が取れないと進まないというのが実状であり,この実状を無視して流動制度を活性化す るのは困難が多い。この問題を克服し真の活性化を図るには,次の3点を考慮する必要がある。(1) 従来の分子研中心の体制 ばかりでなく, 流動元の大学の研究室を巻き込み,そのスタッフや学生全員が積極的に参加できるような体制を実現する。(2) 分 子研で最先端の早急に解決すべきテーマを開発プロジェクトとして企画し,このプロジェクトを実行しうる研究者を招へいする。

(3) このプロジェクトに,所内グループも係わることによって,流動部門研究室・流動元大学研究室・分子研内部の関連研究室の 3組織が一体となってプロジェクトを推進するという最も実効性の高い体制がとれることになる。また,現在の流動促進経費の枠を 大きく越えたプロジェクト研究経費の設定によって,より大型の研究が可能になり,大学の研究者にとっても大きな魅力となるため 優秀な人材が流動制度に応募するようになって,大きな成果が期待される。これは,分子科学研究所の活性化に,研究面のみな らず人的交流の面でも大きく貢献する制度である。

現在の流動部門に係わるプロジェクトとして次の3課題を提案する。これらプロジェクトは,2年ないし4年間継続するものとする。 1 「金属錯体イオンによる酸素分子の活性化」

2 「界面ナノプロセスの開発」

3 「大気環境におけるイオンクラスターの動態」

プロジェクトの新しい実行形態

      

流動プロジェク ト研究

(2)

将来計画及び運営方針 227 [流動プロジェクト研究 -1]

「金属錯体イオンによる酸素分子の活性化」

地球上の生命体が活動するためのエネルギーはA T Pの加水分解によって供給されおり,逆反応のA D PからのA T P形成は酸 素分子が鉄あるいは銅イオン上で水に還元される際に放出されるエネルギーにより供給されている。このように酸素分子は生体 にとって必須であるが,また各種の病気の原因となっていることも指摘されている。たとえば,酸素分子は各種の金属と反応して 金属ーパーオキサイド付加体を形成し,有機化合物から水素を引き抜くことにより,D NA やアミノ酸に致命的な損傷を与えること が知られている。したがって,金属ーパーオキサイド付加体の反応性を明らかにすることは,金属イオンによる酸素分子の活性化 の本質を明らかにすることでもあり,炭化水素の酸素酸化反応への応用も期待される。本研究では各種の金属錯体と酸素分子と の付加体の合成・単離を行うとともに,活性化された酸素による炭素ー水素結合切断を行う計画である。

[流動プロジェクト研究 -2]

「界面ナノプロセスの開発」

L S Iの微細化が極限に達しつつあり,これまでのスケールダウン一辺倒の延長線上にない新しい量子効果デバイスの発明の 必要性が急速に高まりつつある。即ち,より人間の頭脳に近いコンピュータを目指す上で飛躍的な進歩をもたらすことが期待され, 新しい量子効果デバイスの発明の科学技術全般への影響は計り知れないものがある。量子効果デバイスの研究はすでに活発 な展開がなされているが,実用性を考慮した場合,量産性のあるナノ加工技術の実現が必須であるが,今のところそのような研 究は全くなされていない。放射光励起プロセスは,その高い空間解像性(∼10nm ) ,低損傷性から,量子効果デバイス製作のた めのナノプロセスとして有望である。本プロジェクトでは,このような観点から,分子研放射光装置(UV S OR ) を用いた放射光励 起エッチング反応により半導体表面にナノ構造を形成する技術を開発する。また,この表面反応をS T Mや赤外反射吸収分光な どにより解析し,構造評価や,反応機構の解明を行う。

[流動プロジェクト研究 -3]

「大気環境におけるイオンクラスターとその動態」

自然界の様々な環境,即ち,水を主体とする海や河川,植物や動物の内部,地球大気,あるいは宇宙空間において,分子クラ スターはその性質や機能の発現に大きな役割を果たしている。大気中には水を主成分とする様々のクラスターが存在し,霧やス モッグ発生などの身近な現象にも深く係わっている。近年,大気中に硫酸や硝酸イオンが形成され,これが生態系に大きな影響 を与えていると議論されるようになった。酸性雨やイオンミストは森林破壊を引き起こし,私たちの身近な問題ともなっている。この ようなイオンクラスターの存在はまた,時として電波障害を引き起こし,航空機や船舶そして自動車の電波誘導にトラブルを与え るなど,イオンクラスターの存在は様々な環境で目に見えない形で影響を及ぼしている。しかしながら,その研究は全く手つかず といってよい状況であった。本プロジェクトは,この大気中イオンクラスターの生成・消滅・反応・成長・拡散といった動態を明らか にするための基礎的研究を行うものである。

◎各プロジェクトに共通の新規予算事項

1. 開発研究費:取り上げるテーマは従来の枠を越えた開発研究を主体とするため,装置制作等に多くの費用を要することが 多い。この開発を積極的に推進するためにこの開発研究費は不可欠である。

2. 流動旅費:プロジェクトに係わる流動教官および特別共同利用研究員が1年に 6往復程度行き来し,分子研に長期滞在 しながらもプロジェクト遂行に関して流動元との自由な交流を可能にする。

参照

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